【特集】香港「銅鑼湾書店」関係者失踪事件 香港内で拉致か-中国国内でも報道 中国人の反応も

causeway bay bookseller

中国大陸の禁書を扱う香港の書店「銅鑼湾書店」関係者の失踪が問題となっています。昨年10月から12月末にかけて、同書店の関係者5人が次々と消息をたち、中国政府の関与が取り沙汰されています。香港の命運にかかわるこの事件、意外なことに中国国内でも報道されています。微博(ウェイボー)より、まずその報道ぶりを見てみましょう。

「【香港書店株主の失踪が疑われている 警察は既に事案は取り下げられたと証言している】香港銅鑼湾(トンロー湾、広東語読み)書店の株主李波は12月30日に”失踪”したと言われているが、この事件は香港で派手に喧伝されており、李波は内地の法執行人員が”越境し”連れて行ったのではないかとの考えが最も有力とされている。環球時報は微博のニュースで”香港警察は李家は既に事案を取り下げたと証言している”としている。」(1月5日、頭条ニュース)

(訳者注:内地は中国国内を指し、香港や台湾は海外と同様”外地”と認識されています)

引用ここまで。

この記事にあるように、李波氏の夫人は警察への届け出を一旦取り下げました。理由は定かではありません。しかし世論の強い声に押され、香港政府は中国当局に李波氏に関する情報を照会しており、1月18日現在、中国政府からの回答を待っているところです。

改めて言うまでもなく、これは大事件です。一国二制度の破綻につながりかねません。香港にとってはもちろん、一歩対応を間違えれば中国にとっても、大きな転換点となるかもしれません。この事件に秘められた潜在的な破壊性はそれほど大きいのではないでしょうか。少し長くなりますが、この件に対する中国人のコメントを見る前に、今一度この事件の問題点を洗っておきましょう。

2014年に起こった香港反政府デモ(いわゆる「雨傘革命」)以降、中国政府は香港に対する締め付けを強めていますが、これまではあくまでも”間接的な”脅迫に過ぎませんでした。中国政府は、香港政府という表看板を裏から操り、自ら手を下すことはしませんでした。形だけでも”二制度”を尊重していたのです。

ところが、今回は香港内で香港人を力ずくで拉致し、香港-中国間の”出入境”手続きも全く無視していたことがわかってきました。李波氏は中国への入境に必要な”回郷証”を家においたまま、何故か中国側に入境していたことが確認されています。失踪直後に深圳から家族宛てに電話があったほか、最近になって家族宛てに内地にいる旨を記したファックスが送られてきています(このファックスは、当局の火消し策と考えられています)。しかし、少なくとも香港側の出入境管理には、同氏の出境記録がありません。中国当局が本来警察権のない香港域内で直接手を下し、通常の出入境手続きを経ずに同氏を中国内地に連れ帰ったという疑いが濃くなっています。やや乱暴な例えになりますが、北朝鮮が日本国内で日本人を拉致し、北朝鮮に連れ帰った、というパターンと類似した構図です。これが事実であれば、中国政府は一線を越えてしまったことになります。

これまでにも、2013年頃から中国の公安当局が香港域内で”暗躍”していると疑われるケースは香港でも報道されていたようです。しかし今回は事がここまで大きくなってしまいました。推測ですが、中国政府側は、事案を取り下げるように仕向ければ、火消しができると安易に考えていたのかもしれません。しかし、拉致現場の目撃証言も既に香港メディアに出ており、6,000人規模のデモも行われ、香港市民やメディアの追及の手は収まる様子を見せていません。中国政府は”一国二制度”は内政問題だとして突っぱねようとしていますが、失踪者5名のうち1名が外国籍、1名がイギリスのパスポートの保有者であることが確認され、この論理も苦しくなりつつあります。そのうちの一人が香港内で拉致されたとされる李波氏で、既にイギリスは憂慮の声明を出しており、EUもそれに続いています。

ここで少し補足しておきましょう。いわゆる”香港人”、つまり香港に住む華人は返還の際、自動的に中国籍となっています(少なくとも、中国政府はそのように認識しています)。カナダやオーストラリアといった外国籍をもつ華人はここで二重国籍となりますが、中国政府は二重国籍を認めておらず、中国籍扱いとしています。もっとも、実際はカナダ、オーストラリア国籍の”香港人”は事実上の二重国籍状態で、中国以外のパスポートを使って海外と行き来しているのが実情です。その一方で、香港人の中にはイギリスの”パスポート”を持つ人々が一定数います。植民地であったことの名残として、イギリスへの永住権はもたないものの、その”パスポート”のおかげで、”海外”を旅行する際にイギリス政府の保護や便宜を得られることになります。中国政府は、中国国内や香港でそのパスポートの効力を認めず、イギリス政府の保護を受けることはできないとの立場を明確にしていますが、そのような香港人の多くは海外に旅行する際には、そのイギリスの”パスポート”を使用しています。

今回の李波氏はイギリス国籍なのか、それとも単にイギリスの”パスポート”だけを保持しているだけなのか、今のところはっきりと報道はされていません。ただ、イギリス政府の立場からすれば、イギリスの”パスポート”をもつ同氏が(イギリスから見て)”海外”で失踪している以上、重大な関心を寄せるのは当然ということになります。

ところで、スウェーデン国籍の桂民海氏の場合、事情は全く異なります。同氏は中国本土生まれでもともと中国国籍でしたが、スウェーデンに留学後、スウェーデン国籍を取得したと報じられています。上述の通り中国政府は二重国籍を認めていませんので、同氏はスウェーデン国籍取得の際に中国国籍から離脱しているでしょう。ですから、彼は香港に住んでいる外国人であり、スウェーデン政府からしてみれば、自国民が”外国”で失踪した事件に該当し、当然ながら重大な関心を寄せすことになります。

このような事実がありながら、中国政府はこの5人は中国公民だと強弁しています。中国政府はおそらく重々わかっていながら、苦しい嘘をついているのでしょう。

中国政府がどうして外国籍に手を出したのか、疑問に思わずにはいられません。実行部隊の勇足か、みつからないと高を括っていたのか、あるいは「香港のことには口出しさせない」という驕りか。単純に知らなかったとすれば、国籍に関する認識が甘すぎたとしか言いようがありません。いずれにせよ、どう見ても致命的な戦略ミスとしか思えないのですが…中国国内-内地では誰かが突然失踪し、場合によっては別の都市に連れて行かれることは、ありふれていると言えないまでも”まあ、ありうること”なのかもしれません。中国の内地で普通に通用することが、境界の外ではなかなか通じないということに、ここまで大事になって当局はようやく気が付いたのかもしれません。

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中国人のコメントを見てみましょう。

→どんな状況なんだ?

→人も死体もみつかってないのに、事案を取り下げ?

→(涙マーク12コ)

→この人、知ってる。禁書を出版している人

→コメントする勇気がなくて。削除されるんじゃないかって。

→笑える。自分の旦那くらい自分の手の中に握ってろよ。

→しっかりと調査しなくてはならない

→この書店にある本は、某組織が見たくない本ばかりだ

→ある本を出版したらしいね

→内地はなんでこんな愚かな真似をしたんだ?

→みんな見るだけにして、早く寝よう。このことは、私たちが心配してもどうしょうもない

→どうやら、とても多くの人が真相を知っているみたいだね。教えて!

→深圳に連れて行かれた

→白色テロだ!

(訳者注:当局が反対勢力に対して起こす暴力的な直接行動のことを指します)

→環球時報は真っ黒なのではないか、報道もしない。内地でこのことを誰が知っているというんだ?

(訳者注:環球時報は人民日報社発行の新聞で、国内外のニュースを掲載しています。なお、人民日報は中国共産党中央の機関誌です)

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→ちょっと耳の痛い話をするけど、もし内地の部門が人を捕まえに行ったんだとしたら、絶対に香港基本法と一国二制度を公然と軽んじていることになる。というのも香港では内地(当局)は法の執行権がないからだ。絶対に香港人の不満を引き起こし、大きな問題となるだろう。

→政治本がどうかしたの?よくわからないんだけど、我々内地の政治本のこと?マルクス主義の本?

→派手に騒いでいるだけだと思っていたよ

→回郷証やパスポートがなくて、どうやって(香港から)離れて、また戻って来れるんだ。香港の警察は管理をしてないっていうのか

→取り下げさせられたにちがいない

→そもそも誰もこの本屋を知らなかったのに

→コメントをしたら、削除された、これが約束されているはずの言論の自由か!

→何日も前の出来事だね

→(怒りマーク22コ、涙マーク47コ)

→まだみつかってないのに、事案撤回だって?ふざけるな。

→法治国家?

→少しはプラスエネルギーの話ないのかな。一日中マイナスエネルギーばかり

→中国の憲法には明文規定がある。公民には結社、出版の権利がある。いまは、本すらも売ってはいけないのか?…

→(コメントを)読むだけで、何も言わないでおこう

→この書店は、内地の禁書を売っているんだよ…

→先に本を書いた人を捕まえなよ

→そんなに危険な環境なのか?

→天下が混乱しないかどうか、それだけが怖い

→情報によると、あの本屋は政治に関する大陸の禁書を専門に売っているそうだ。これ以上言わなくてもわかるだろ。

→実際のところ、みんなわかってるんだよね。悲しい国

→本当に、国家がたった一冊の本、一軒の本屋を許容できないなんて。そんな国は自信がないし、強大じゃないんだ。そうじゃなきゃ、なんでたかが一軒の本屋を潰さなきゃならないんだ

→身柄が中国大陸にあるっていうのは本当だ。ファックスが送られてきている。曰く”自分の方式を使って内地に戻った”と書いてある。慄然とさせられるね。

(訳者注:李波氏の自筆ファックスが届いたと写真付きで台湾メディアが報じています。なお、このコメント主の居住地は不明ですが、繁体字《旧字体》で書かれているので、香港人か台湾人と思われます)

→はいはい、みんなもうわかったね!XXXによって捕まえられたのさ!大陸人民の口はふさげるんだろうけど、香港人の口をおまえらはふさぐことできるのか?

→ろくでなし国家

→中華まんは最低ラインを割った

(訳者注:中華まんは習近平主席のあだ名です)

→自作自演じゃないの

→真相は?

→二号さんがいて捕まったんじゃないの 認めるのがきまり悪くてさ

→香港人は神経病。なんだって大陸のせいにする

(訳者注:そろそろ、五毛~アルバイトネット工作員~のお出ましかもしれません。立て続けに香港サゲのコメントが入ってきました)

→みんなは感じていないかもしれないけど、香港返還以降、いい歌がどんどん少なくなって、いい映画もどんどん少なくなった。香港の輝きはもうなくなってしまったの?これは全て何でなの?

→脅されて、取り下げたんだろう…恐ろしい

→真相を知りたい

→つまり内地の政府が香港人を拉致したんだ

→香港人を殴り倒せ

→こわすぎ

→特務と五毛、ほんとに多すぎ。香港に潜伏して、コメントがはじまるとすぐに真実の心の声を覆い隠してしまう。金で国際的地位を売るばかどもだ

→どうしてか知っている。この書店は《習近平と彼の愛人》という本を出版した。内地では差し止められたが、結果として彼らは出版を継続した。その後何人かが失踪し、香港では大騒ぎだ。たくさんの人がデモをしている。現在中央はまたどんな手段を使うか考えているんだろう。

→五毛でも、(この状況を)見ていられないだろう

→この事件のせいで、初めて香港人の味方をすることになった

→横から失礼。いま、李某が英国籍だということが確認された。外交部は、はっきり調べもしなかったのか

(訳者注:アイルランド在住の香港人男性のようです)

→経済崩壊、政治混乱、何人かの五毛に頼って世は太平だと装うのか?これこそがニューノーマル?我々に未来があるのかどうかもわからない。北朝鮮化?シリア化?それとも台湾?

→コメントを見ると、たくさんの神人間が真相を知っているね。みんなの勇気と正義にいいねを送ろう

引用ここまで。

当サイトでは、今後も香港の報道などに目を配りながら、この件を注視していきたいと考えています。

(内容を一部、加筆・修正いたしました。2016年1月20日)

翻訳元:微博#热点#

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